コラム

  • オルガンのドローバーで音色を作る方法!ゴスペル奏者直伝の3設定

    1億3,421万7,728通りの響きから「魂を揺さぶる音」を選ぶ方法

    134,217,728通り。これは、ハモンドオルガンに備わった9本のドローバー(音色調整レバー)が作り出すことができる音色の組み合わせ数です。ゴスペルの本場ジャマイカ出身で、来日20年以上のキャリアを持つJohn Lucas(ジョン・ルーカス)は、この膨大な選択肢の中から、その瞬間の祈りや喜びに最適な響きを瞬時に選び出します。ジョン・ルーカスが率いるクワイアやワークショップでは、歌声を引き立てるオルガンの音色が、参加者の心を一つにする重要な役割を果たしています。

    結論から申し上げますと、オルガンのドローバーで理想の音色を作る秘訣は、「倍音の仕組みを理解し、曲の感情曲線に合わせて引き出す本数を変えること」に集約されます。単にレバーを動かすのではなく、歌い手の呼吸に合わせ、時には優しく包み込み、時には力強く鼓舞するための具体的な設定が存在します。この記事では、初心者の方でもすぐに実践できる3つのケーススタディを通じて、本場のゴスペルサウンドを再現する手順を詳しく解説します。

    ドローバーの基本構造:9本のレバーが持つ役割

    ドローバーによる音作りを始める前に、まずは9本のレバーがどのような役割を担っているのかを整理しましょう。ハモンドオルガンのドローバーは、左から右に向かって低音から高音へと並んでいます。それぞれのレバーには「8’」や「4’」といったフィート数が記されており、これはパイプオルガンのパイプの長さに由来しています。

    • 左側の2本(茶色):低音域とサブオクターブを担当し、音に厚みと重厚感を与えます。
    • 中央の3本(白):基本音(8’)とその倍音を担当する、音作りの中心となるエリアです。
    • 右側の4本(黒・白):高次倍音を担当し、音に輝きや鋭さ、明瞭さを加えます。

    各ドローバーは0から8までの9段階で引き出すことができ、数字が大きいほどその音域のボリュームが大きくなります。この組み合わせによって、フルートのような柔らかい音から、トランペットのような鋭い音まで自由自在に操ることが可能です。

    【ケーススタディ1】静かな祈りを表現する「フルート系」設定

    ゴスペルの礼拝やコンサートの冒頭、あるいはメッセージの合間に流れる静かなBGMでは、歌い手や話し手の声を邪魔しない、温かく包み込むような音色が求められます。このような場面でJohn Lucas(ジョン・ルーカス)が推奨するのは、基本音を強調した「フルート系」の設定です。

    具体的なドローバー設定:80 0000 000

    この設定は、一番左の16’(低音)のみを全開にする、あるいは左から3番目の8’(基本音)のみを全開にする極めてシンプルな構成です。手順は以下の通りです。

    • まず、すべてのドローバーを「0(押し込んだ状態)」にします。
    • 左から3番目の白いドローバー(8’)を「8」まで引き出します。
    • 音が細すぎると感じる場合は、一番左の茶色のドローバー(16’)を「4」程度まで引き出し、低域の深みを加えます。

    メリット:非常に純粋で柔らかい音が鳴り、聴き手の心を落ち着かせる効果があります。ピアノとのアンサンブルでも音がぶつかりにくく、クワイアの繊細なハーモニーを美しく支えることができます。ジョン・ルーカスのバラード曲など、歌詞の一言一言を大切に届けたい場面で最も多用される設定の一つです。

    【ケーススタディ2】喜びを爆発させる「フル・オルガン」設定

    アップテンポな賛美や、クワイア全員で力強く歌い上げるクライマックスでは、オルガンにも圧倒的なエネルギーが求められます。日本武道館や全国の大型ホールでステージを共にしてきたジョン・ルーカスのステージでも、この「フル・オルガン」サウンドが会場の熱気を最高潮に引き上げます。

    具体的なドローバー設定:88 8888 888

    いわゆる「全部出し」と呼ばれる設定です。すべてのドローバーを最大値まで引き出すことで、オルガンが持つすべての倍音が重なり合い、オーケストラのような重厚な響きが生まれます。

    • 9本すべてのドローバーを「8」まで引き出します。
    • レスリースピーカー(回転スピーカー)の回転速度を「Fast(高速)」に切り替えます。
    • 足鍵盤(ベース)を併用することで、さらに地響きのような迫力を演出します。

    注意点:この設定は非常に音が大きいため、歌い手の声が埋もれてしまわないよう注意が必要です。ジョン・ルーカスは、クワイアがユニゾン(全員同じ旋律)で歌う場面では少しドローバーを戻し、サビの3部合唱で一気に全開にするなど、ダイナミクス(強弱)のコントロールを重視しています。また、高音が耳に刺さりすぎる場合は、一番右の2本を「5」程度に下げることで、聴き心地の良い力強さを維持できます。

    【ケーススタディ3】歌を輝かせる「ジャジー・スクワブル」設定

    ゴスペル特有の「ファンキーさ」や「都会的な響き」を演出したい場合、中音域を抜いて高音を強調するテクニックが有効です。これは「スクワブル(Squabble)」と呼ばれ、オルガン奏者がソロを弾く際や、歌の隙間にフィルイン(おかず)を入れる際によく使われます。

    具体的なドローバー設定:88 8000 008

    左側の3本で土台を作り、一番右の1本でキラキラとした輝きを加える設定です。手順は以下の通りです。

    • 左から3本(16′, 5-1/3′, 8’)を「8」まで引き出します。
    • 中央から右にかけての5本をすべて「0」にします。
    • 一番右のドローバー(1’)を「8」まで引き出します。

    メリット:「モコモコ」とした太い低域と、「チリチリ」とした鋭い高域が同居し、パーカッシブな演奏が際立ちます。ジョン・ルーカスが提唱する「リズムを感じるゴスペル」において、この設定は欠かせません。指を滑らせるグリッサンド奏法を取り入れると、より本場らしいエキサイティングなサウンドになります。

    ジョン・ルーカスが教える「歌い手」を輝かせるための心得

    ドローバーの設定を覚えることは大切ですが、John Lucas(ジョン・ルーカス)は常に「オルガンはクワイアの呼吸を助けるための楽器である」と語ります。本場のジャマイカやアメリカの教会では、オルガン奏者はディレクター(指揮者)の動きや歌い手の表情を凝視しています。どれだけ素晴らしい設定を作っても、歌のメッセージを邪魔してしまっては意味がありません。

    例えば、歌詞が「悲しみ」について歌っている時に、キラキラした高音を強調しすぎると違和感が生まれます。逆に「勝利」を宣言する場面で、こもった音色では聴衆の心に火をつけることはできません。ジョン・ルーカスが東北大学大学院で学んだ知性や、震災復興支援で培った「心に寄り添う姿勢」は、この音作りの細部にも宿っています。常に「今の歌声にはどの倍音が必要か?」を問い続けることが、プロフェッショナルな音作りへの近道です。

    初心者が失敗しないための3つのチェック項目

    オルガンの操作に慣れないうちは、以下の3点を意識するだけで、演奏の質が格段に向上します。

    • 1. 迷ったら「88 8000 000」から始める:これはゴスペルの基本中の基本となる設定です。どんな曲にも馴染みやすく、ここから高音を足したり低音を削ったりすることで、自分なりの音色を見つけやすくなります。
    • 2. 自分の耳ではなく「客席の響き」を想像する:オルガンのスピーカーの近くで聞く音と、客席で聞こえる音は異なります。特に高音域は遠くまで届きやすいため、自分が思っている以上に「鋭い音」として伝わっている場合があります。
    • 3. ドローバーを動かすことを恐れない:曲の途中で設定を変えるのは勇気がいりますが、ゴスペルは変化の音楽です。静かなAメロから盛り上がるサビにかけて、徐々にドローバーを引き抜いていく「クレッシェンド」の技術を練習してみましょう。

    まとめ:あなたの「声」をオルガンで表現しよう

    オルガンのドローバー操作は、まさに「絵の具を混ぜて色を作る作業」に似ています。John Lucas(ジョン・ルーカス)が全国13会場での指導実績や、テレビ出演、日本武道館でのステージで示してきたのは、音楽を通じて「喜びを分かち合うこと」の尊さです。ドローバーで音色を作る方法を学ぶことは、単なる技術の習得ではなく、あなたの内側にある感情をより豊かに表現するための手段を手に入れることに他なりません。

    もし、「もっと本場の響きを体感したい」「自分の歌や演奏に磨きをかけたい」と感じたら、ぜひジョン・ルーカスの活動に触れてみてください。全国各地で開催されるワークショップや、自宅から学べるオンラインゴスペルカレッジでは、この記事で紹介したようなテクニックをさらに深く、実践的に学ぶことができます。音楽を通じて心が元気になり、前向きになれる瞬間を、私たちと一緒に作り上げていきましょう。

    まずは、最新のスケジュールを確認し、ゴスペルの扉を叩いてみてください。あなたの歌声と、オルガンの美しい響きが重なり合う日を楽しみにしています。

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